Virus
祐「クッ…」


ズルゥ…


祐騎の体が触手から解放された。


「!バランスが取れるようになった!」


操縦士が言った。


ぐったりしている祐騎を涼は引っ張り上げた。


涼「くっ…」


涼の右腕は少しずつ元に戻る。


涼「祐騎さん…無事ですか?」


涼は息を整えながら聞いた。


祐「ゴホッ…。この…クソガキが…。無茶しやがって…」


祐騎はまだ生きていた。


涼「!よ…良かった…」


安堵の声をあげてから、涼はフェイラーを見た。


触手を切られて倒れたようだ。


すぐには攻撃してこないだろう。


だが、安心したのはつかの間、機内は大騒ぎになっていた。


「なっ、あの子…腕が変形して…!?報告にあった『感染者』じゃないか!?」


瞳「!」


隊員が叫ぶ。


「だったら乗せるわけにはいかない…」


瞳「そんなっ!」


その瞬間、怒声が聞こえた。


流「ふざけるな!まだあんな子どもだぞ!」


瞳「る…流架さん?」


怒声の主は流架だった。


いつもは温厚な流架が信じられない形相で怒鳴っている。


「バカ!お前、ウィルスに感染したら理性がなくなるんだろ!?そしたら、意味がなくなるどころか墜落して全員死亡じゃないか!」


流「あの子はそんな風にはならない!!祐騎を助けただろ!?」


「何を根拠に!今だけかもしれ―…」


すると…


ガシッ!


「!?」


流架がその隊員の胸ぐらを掴んだ。


流「今はそんな事を言ってる場合じゃないだろ!ここに留まる方が危険なんだよ!祐騎だって急いで治療しなければ死ぬんだ!責任なら俺達が取る!だから、早く上げろ!」


あまりの剣幕に隊員はたじろいだ。


「くっ…どうなっても知らんぞ!責任は取れよ!」


流「分かってる!」


流架が手を離した。


先に祐騎が機内に運ばれる。


流「祐騎!」


流架が祐騎を引き上げた。

その次に涼が中に入る。


その瞬間、ヘリコプターのドアが閉まった。
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