Virus
―ゼロ SIDE―


ゼ「行った…な」


ゼロが呟いた。


「アグゥ…!アヒャ…アハ…」


フェイラーはゼロが足を折って頭を殴り付けたので当分動けそうではない。


苦しそうに身をよじりながら、それでも笑っている。

ゼ「…ゴメンね…。痛かったよね…。でも、もう蘇らないで……。ここで…消えた方が良い…」


ゼロは静かに言った。


フェイラーの血が体にかかっている。


いつもなら、なんて事ない。


でも、今日は違った。


少しだけ違和感があった。

ゼ「…少しは戻ったのかな……。やっぱり、瞳に会って良かった…な…」


そう思った時、声が聞こえてきた。


聞き慣れたあの声が……。

ゼ「……そろそろか…」


爆発まで3分もない。


ゼロはもう1度ヘリを見た。


もうだいぶ離れている。


これなら爆風に巻き込まれる心配はないだろう。


その事を確認すると動けないフェイラーを置いて、フェイラーが出てきた穴から飛び降りた。


―――――――


「アハァ…」


屋上に残されたフェイラーはゴロッ仰向けになった。


彼の脳はもう壊れてしまっていて、理性も何もない。

ただ『殺す』だけの化物だった。


何かに対する感情も消えているはずだった。


それでも、空を見たフェイラーの顔はいつもと違うように見えた。


夜明けの美しい空を食い入るように見つめる。


もうすぐ爆発する。


「アハ……」


いつもの笑い方とは違う、人間らしい笑い方だった。

次の瞬間、研究所は爆発した。


爆風が研究所を襲う。


フェイラーの体も爆風に包まれる。


その時の、フェイラーの表情は穏やかなものだった。

そして…跡形もなく研究所は消え去った。
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