群青色の空に
「瑠璃様、宜しいでしょうか」
部屋の外から千代の声が聞こえた。
まさか、今の会話を聞かれたのだろうか。
「あ、ああ。」
千代がふすまを開け、頭を下げる。
「お仕事は終わられましたでしょうか。先程仰られていたお話をお聞きに参りました。」
いつもと変わらぬ優しい表情の千代。
そうか。
千代のことを信頼している。
ならば、千代の決めたことに口を挿むことはない。
「・・・いや。もうその話は良い。それより夕食の準備はできておるか。」
「ええ。ご夕食ですね、では参りましょうか。」
振り返ると、幸がうつむいて畳をじっと眺めている。
「幸、特注書を世哉に渡しておいてくれ。」
「は、はい。分かりました。」
さっと顔を上げると幸はいつものように明るく笑っていた。
そのまま瑠璃は部屋をあとにすると大広間へと足を運んだ。