群青色の空に
食堂の中からは騒がしい音が聞こえてきた。
大忙しで全員分の朝食を作っているようだ。
戸を開けようとすると、
中から出てきた千代とぶつかり、
千代は驚いた声をあげた。
「瑠璃様?どうなさったのですか?
今向かおうとしていたのですよ。」
瑠璃は手に持っていた髪櫛を千代に見せた。
「直ったのですか?」
千代も知らなかったようで驚いている。
「千代が波津家に特注したのでは
ないのか?」
「ええ。昨夜、特注書を送りました。
しかし、まだ届いていない筈ですよ。」
たしかに届くのには早すぎる。
それに、全く同様の物を
こんなにも短時間で
作り上げることができるのだろうか。
「では、屋敷の者の誰かが作ったというのか?」
訝しげにつぶやいた瑠璃の言葉に千代は
まさか、と言った。
「素人がこんなにも似せて、作ることなどできませんよ。ましてや、一夜で作るなど。」