群青色の空に
「誰かが新しいものと引き換えに持っていったようですね」
「盗んだということか・・?」
千代は少し考え込むと口を開いた。
「・・いえ、全く同じものを盗む意味はあるのでしょうか、ましてや壊れたものなど」
瑠璃は手の中にある髪櫛を見つめた。
偽物とは思えない。
全く同じものだ。
「たしか、この髪櫛は特別に母上が波津家に作らせたものだったな?」
「はい。瑠璃様のために頼んでおられましたね。どういたしますか?屋敷の者を集めて話を聞きますか」
「いや・・・それほど騒ぐほどでもないだろう。」
瑠璃は真新しい髪櫛を千代に渡した。
「これで良いのですか?」
「・・・ああ。」
本当は母上から頂いた髪櫛を手元に置いておきたかった。
けれど今更遅いだろう。
盗んだのであれば、既に隠しているはずだ。