群青色の空に

「世哉さんが連れ戻して下さると
仰られていましたから、
私お任せしておりましたのに」


いかにも不満だというように幸は呟いた。


「世哉には放っておいてくれと
 私が命じたゆえ、仕方あるまい。」


「いくら瑠璃様のご命令といえど
私ならすぐにお連れしましたのに」



次々と言葉の出てくる幸の表情は

コロコロと変わり、見ていて可笑しかった。



「ど、どうなされたのですか?」


クスリ、と笑った瑠璃に幸は驚いた様子だった。


「いや・・」


「あ・・申し訳ございません!
私、瑠璃様の前ではしたないことを!」


おどおどとする幸に笑いが止まらない。



滅多に笑わない瑠璃が笑ったことに

喜んでいいのか、分からずに

幸はただ、おろおろと立ち尽くすしかできなかった。





< 8 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop