女王様とお調子者 **恋の花が咲いた頃**

「その子がさ、思い詰めたような顔してて…ゴミ箱に何か捨てたんだ…」


ゴミ箱…?


「そしたら雨降ってきて、濡れるし普通なら屋上から出ようと思うんだけど…」

『だけど…?』

「…その女の子から目を離せなかった。声を張り上げて泣くその子をみたら、感じた事の無い、なんとも言えない気持ちになって、その子が居なくなるまでずっと見つめてた…」


屋上…

ゴミ箱…

雨…


思い当たる事…


だけどまさか…。


「…その日からその子とすれ違う度に意識した。いつの間にか目で追ってたんだよな…。だから気付いた…普通にしてるようで時々切なそうな顔を見せるその子に…」


屋上に来て初めて佐伯がこちらを振り向いた。



< 174 / 186 >

この作品をシェア

pagetop