アナタがいたから
序章
まさかね…まさか自分がこんな風になるなんて誰が知っていただろう?
そう、いつもの日常、いつもの行動。
言葉の前に必ず付いていた『いつもの』
そういう日であり、そういう時間だった。



「ふぅ」
朝の職員室で私は溜息を1つこぼした。
この学校に教育実習生としてやってきて、まだたったの3日。
でも、その3日で十分だった。
教師を目指して頑張ってきたけど、今時の若者には私の教育はただの鬱陶しいお説教に聞こえるみたい。
一生懸命は空回り。
しかも思った以上のパワハラにセクハラ。
心身ともにたった3日でズタボロ状態になってしまっていた。
「私、教師向いてないのかもなぁ~」
とは言え、教育実習も大学の授業の一環。
休むわけにも行かず、ほぼ強制的に頭から手足に指令を送って今日はやってきた。
いつも通りに臨時で設けられた職員室の席につき、ノートパソコンを立ち上げる。
型が古くてスペックの悪いノートパソコンは電源を入れたときからファンの音が響き、そして立ち上がるのが激烈に遅かった。
windowsのマークが旗のようにヒラヒラとはためき、そして軽快な起動音が鳴るまで、誰も居ないのを確認して、机に置いた腕にガバッとうつぶせる。
頭を横に向け、殴り書きされた一枚の用紙を指で摘まんで持ち上げてフッと息を吹きかけた。
「パソコン使えないなら、使えるように努力すりゃ良いのに……」
眼鏡をかけた嫌味な女の教頭が渡した一枚の紙。
全校生徒に配る保護者へのプリント。
教育実習生の仕事とか理由をつけてパソコンで綺麗に仕上げるように命令された。
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