アナタがいたから
「凛、どうかしましたか?」
「え、あ……いや~ココに来る途中に袁君に聞いたのは8人兄弟って聞いたんだけど、7人しか居ないな~って思ってさ」
「……袁、そんな事を?」
「ご、ごめんなさい。だって……僕らは8人兄弟には違いないでしょ?」
「それは……そうだが……」
私の一言で急にこの空間が暗くなり、あの聖君でさえ瞳を伏せている。
(……え?私なんかまずいこと言っちゃった??)
私が少しオロオロしていると、豹君がポツリと呟いた。
「……教えておいた方が良いんじゃない?その凛ちゃんは俺達一族の光麗なんだろ?」
(……?光麗、そういえばさっきもそんな事を)
「そうだな。豹が言う通りだ、俺もそう思うよ。翳兄さんが言いたくないって気持ちは分からなくもないけど……言わずには居られないだろう?」
豹君の言葉に枉君も調子を合わせ、聖君もフゥと一息ついて翳さんに言う。
「2人の言う通りだと思うぜ。翳兄貴の気持ちは俺が一番分る。でも、そうも行かないだろ?」
「あ、あの……私何か悪い事……」
私が周りの雰囲気の変化に申し訳なくなって声をかけると、翳さんは悲しそうな瞳を向けて微笑み、首を振った。
「凛が悪いわけではない。袁の言う通り私達は8人兄弟です。最後の1人は『梟(きょう)』私の双子の兄です……」
「梟さん?双子って言う事は28歳って事?」
「えぇ、そうです」
「へぇ。……どうしてココにいないの?」
「そ、それは……」
「それは別に使徒様が知らなくとも良い事です」
翳さんが少し言いにくそうに私に説明しようとした時、その声を遮るようにして扉からあのハレムオヤジが入ってきた。
「……知らなくても良いってどう言う事?」
「知らなくても良い事はそう言う事です。全く、説明をするといって連れて行ったにもかかわらず、何も説明できておらぬとは……」
「申し訳ございません……父上」
軽く頭を下げてそういう翳さんに、偉そうに瞳を流すクソオヤジ。
(気に食わない……)
はっきり言ってそんな感想しか思い浮かんでこなかった。
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