アナタがいたから
「……何か、不満でも?」
私の近くに寄ってきたクソオヤジはそういって私を見下ろす。
「私、向こうの世界でも色んな嫌がらせを受けたし、気に食わない人もいっぱい居たけど、貴方ほど気分を害する人は初めてだわ」
「なっ!」
「理由も分からないまま、今この世界に居て、散々振り回されているのよ。皆の態度からすれば恐らく貴方が一番偉いんでしょう?なのに、私は貴方から「ようこそ」とも「すまなかった」とも聞いて無いわよ」
「フン、コレは古からの言い伝えにそって行われた事。我とて頼らずどうにかなるのであれば頼ったりしておらぬわ」
「何それ!責任転嫁も良いとこだわ!言い伝えか何か知りませんけどね、私はそんな事言い伝えられてないの
!心の準備も何も無いのよ!!」
「我は嘘は申しておらぬ。こうせよと言われていたからしたまでだ」
未だ私を上から見下ろして言うそのオヤジの態度に、私はなんだか急に胸が痛くなってきた。
先ほど飲み込んで、スッカリ消えたと思っていた涙が再び体の中から沸きあがってくる。
(何よ!わ、私が悪いってそういいたいのね!)
唇を思いっきり噛み締めた。
こんなオヤジの為に涙なんて流してやるもんか!泣いたら負けだ!そう思って俯いた私にオヤジは上から言葉を投げつける。
「ふむ、では説明をしてやろう」
(!!)
『してやろう』その命令口調は私の何かを壊してしまった。
「……ふざけないでよ……」
「なんだ?言いたい事があるならはっきり言え。ボソボソと聞こえぬ」
「ふざけないでって言ったのよ!」
眉間に皺を寄せて私の顔を偉そうな目線で睨んでくるオヤジの左頬を思いっきり力をこめて右手で平手打ちした私は、そのまま、部屋を走り出た。


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