欠陥ドール
晴れた日の朝が好き。
キラキラと輝く陽射しを浴びるのが好き。
庭の花達に水を遣るのが好き。
そして、どんなに忙しくても、時間がなくても、あたしに会いにきてくれる。
挨拶してくれる。
「……よお、マリー。偶然だな」
この瞬間が好き。
毎日偶然会うね、あたし達。
「……おはよう、リタ」
この時の心臓が、一番うるさい。リタに会うだけで、こんなにも心拍数が多くなる。
その夜の闇みたいな黒髪も、青い瞳も全部、あたしは絶対に見間違えない。
「…お前な、そんな嫌そうな顔すんなよ。傷付くだろうが」
リタが眉間に皺を寄せてあたしの額を小突いた。
嫌そうな顔、って自分が今どんな顔してるかなんて分からない。そんな顔、してるのかな。リタを拒絶なんてしてないのに。
「ちょっとは笑え」
いつもリタが言う言葉。
笑う…、あたしは目元を緩めて口角を上げてみせる。
「…すまん。俺が悪かった」
リタがあたしの肩を叩いて首を横に振る。
いつも、失敗する。