欠陥ドール


肩をすくめて「お前にはまだ早かったな」って笑うリタ。


リタの笑顔は、眩しくてくらくらする。あんまり笑わないから、見れた時は本当に嬉しい。



「リタ様ーーーー!!」


「やべ」



遠くからリタを探す使用人の声がする。耳をすませれば足音がすぐ近くまで聞こえた。



「あー…、悪い。マリー。俺行くわ」



リタが少し目を細めて「またな」って言った。



あたしはただ黙って首を縦に振って頷くだけ。


本当はまだ一緒にいたいけど。そんなことは絶対に言えない。



表には出せないけど、確かに胸の中で渦巻いている。



これが、感情っていうものらしい。リタに出会ってからたくさん知った。



でも、こんなのリタにだって言えない。



こんなの、ただの欠陥だから。
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