roulette・2
「ほら、早く入らないと……」
そこで何とか死へと向かう現状を止めようと、喉の奥にぎゅっと力を込めて息を止めた。
でも、もし死ななくても祐樹は私のそばからいなくなってしまうかもしれない。
大切な彼を失うくらいなら、いっその事この手で永遠に私一人のものに……。
胸の奥でゆらゆらと揺らめき始めた黒い情念が、僅かに私の口端を引き上げる。
このまま生まれかけた狂気に身を委ねてしまおうか。
湯水のように湧き出す欲望のまま流されてしまおうか。
ぞくぞくと全身に鳥肌が立ち、私は両手で自分の上半身を強く抱いた。
そのまま止めていた息をひゅっと短く吸い込んで、すでに用意されている言葉をつむぐ。
「近所の人に迷惑になるから、さ。
……ううん違うっ、祐樹、もういいから帰って。早く行って!」
一瞬怪訝な表情を浮かべた祐樹が私をうんざり見下ろすと、まるでやれやれと言うみたいに小さく肩をすくめた。
そしてくるりと私に背中を向けると、何の一言もないまま呆気なく姿を消してしまった。
私ったら何て事を考えていたのだろう……。とにかくこれで祐樹の命が救えた。これでいいんだ。
そこで何とか死へと向かう現状を止めようと、喉の奥にぎゅっと力を込めて息を止めた。
でも、もし死ななくても祐樹は私のそばからいなくなってしまうかもしれない。
大切な彼を失うくらいなら、いっその事この手で永遠に私一人のものに……。
胸の奥でゆらゆらと揺らめき始めた黒い情念が、僅かに私の口端を引き上げる。
このまま生まれかけた狂気に身を委ねてしまおうか。
湯水のように湧き出す欲望のまま流されてしまおうか。
ぞくぞくと全身に鳥肌が立ち、私は両手で自分の上半身を強く抱いた。
そのまま止めていた息をひゅっと短く吸い込んで、すでに用意されている言葉をつむぐ。
「近所の人に迷惑になるから、さ。
……ううん違うっ、祐樹、もういいから帰って。早く行って!」
一瞬怪訝な表情を浮かべた祐樹が私をうんざり見下ろすと、まるでやれやれと言うみたいに小さく肩をすくめた。
そしてくるりと私に背中を向けると、何の一言もないまま呆気なく姿を消してしまった。
私ったら何て事を考えていたのだろう……。とにかくこれで祐樹の命が救えた。これでいいんだ。