roulette・2
「ねえ、それ……、ちょっと触らせてよ」

ろくに言葉も通じないだろうと思って何気なく言ってみると、予想に反してリッキーは私にすうっと右手を掲げた。

「いいの?」

戸惑いながら手を差し出すと、小指の先ほどのその球が私の掌に転がされた。

すぐに親指と人差し指でつまみ取り、闇にかざすようにじっくりと観察する。

「へえ、黒い球の真ん中に赤い炎みたいなものが揺らめいてる」

大きさの割にずっしりと重くて、素材はわからないけれどきらきらと光沢のある不思議な球体。

角度を変えてしばらく眺めていると、何だか玄関の方に不気味な気配を感じた。

「……誰か、いるの?」

まさかと思ったその瞬間、大きな黒い影がすうっと動いた。

声も出せずに硬直する私の視線の先に、見たことのない長身の男が姿を現す。

暗くて容姿がほとんどわからないけれど、目だけが恐ろしいほど爛々と輝いていた。

「……よこせ」

低くかすれた声を出しながら男が私に手を伸ばしてくる。

「いやっ、来ないで!」

窓際に立っていた私は、唯一の逃げ道を塞がれすでに身動きの取れない状態だ。
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