roulette・2
「その証を、こっちへ」

じりじりと私を追い詰める男が、思い切り手を伸ばせば届くかもしれないという距離まで来た時。

不意に注いだ月明かりで、男がコバルトブルーに輝いた。

色素の薄そうな髪色、青白い顔色、強い輝きの中に憂いを帯びた瞳。

息を飲みながら見上げると、どうやら窓から差し込む青い光が上下白のスーツに反射して、全身がコバルトブルーに染まって見えたようだ。

紳士的な外見の男はあまり悪い人間には見えなかった。

でも私から何かを奪おうと不法侵入しているのだから、良い人間でもないのだろう。

冷静にそんな事を考えていると、まるで凍てついた氷雪のような感情のない口調が響いた。

「早くよこすんだ」

ひりりと空気を震わす声に、とん、と背中が窓枠についた。

今まで感じた事のない圧迫感にいつの間にか後ずさっていたらしい。

「あなた誰?証って何の事?」

男は精一杯頑張って出したその言葉に反応せずに私の首筋を見た。

「リッキー、隠れていないで出ておいで」

でもリッキーは全然姿を現さない。

「リッキー、僕の事忘れちゃったかい?」
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