雪に埋もれた境界線
 候補者六人だけになった途端、安堵し、緊張から開放されたからだろう、たくさんの溜息が室内を支配した。


「いや〜、何だか随分広い屋敷だねぇ。圧倒されたよ」


 木梨が屋敷の見取り図を見ながら驚きの声を上げた。

 他の候補者も深く頷き、どこか緊張している様子である。


「そうですわね。部屋を自由に使っていいと仰ってましたけど緊張しますわ」


 相馬が強張った表情で皆にそう云うと、久代が女子高生のような口調で提案した。


「だよね〜。でもさ、こんなこと滅多にないんだから、とりあえずサロンでも行ってみない?」


 久代も落ち着かないのだろう。テーブルの上に置かれた自分の部屋のカギを、指で突っつくようにしていじっている。


「いいね。皆さんで行きましょうか? 一人で行動する気になれないですよ」


 久代に答えたのは座間だった。座間は分厚い唇をへの字に曲げながら、困ったような表情である。


「まず二階に自分達の荷物を置いてからサロンに行きませんか?」


 陸は自分の部屋を見てみたい気持ちが先行していたので、皆の顔を見渡して訊いた。


「まぁ、いいけど。陸、早く自分の部屋を見てみたいんじゃないの〜?」


 どうやら久代に見破られたみたいである。

 そこで陸が顔を赤くすると、候補者達は一斉に笑った。




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