雪に埋もれた境界線
「じゃ、部屋に荷物を置いたら廊下で集まって、皆で一階のサロンへ行きましょうか」


 木梨が良く通る声で候補者達をまとめると、各自部屋のカギを手に取り、ぞろぞろと全員食堂を後にした。

 廊下に出て改めて壁や天井を見渡すと、壁や天井は奇妙な動物のようなオブジェと同じ、奇妙な柄のクロスが貼られており、天井の灯りは暗く、弱々しい光を放っていた。

 またこの奇妙な動物のモチーフか。何だかこの奇妙な動物のモチーフに囲まれると、気が滅入っていくな。それに薄暗いから余計そう感じるのかもしれないけれど。

 磯崎から渡された見取り図を頼りに、階段まで辿り着くと、一列になり上り始めた。

 そして全員が上り終えると、二階の廊下を興味深く見渡した。

 やはり一階と同じ、壁には奇妙な柄のクロスが貼られており、灯りも暗く、全体的にこの屋敷は薄暗いという印象が強い。


「じゃ、各自荷物を置いたら廊下で」


 木梨が穏やかにそう云うと、各自部屋に向かった。

 陸の部屋は階段を上ってすぐなので、一番最初に扉のカギを開け部屋へ入った。

 二〇一号室である。

 部屋に入ると、まず入り口の左側にある電気のスイッチを押した。部屋の電気も薄暗く、灯りは弱々しい。

 そして陸は大きな溜息を洩らした。何故なら、自分の住んでいる安アパートの三倍の広さはあるだろう。そして応接間に敷き詰められた、柔らかい絨毯と同じ物が、床に敷き詰められており、部屋には、しっかりとした造りの机と椅子、そしてシングルにしては広すぎるベッド、ベッドの横には小さなテーブルがあり、その上には、花をモチーフにしたステンドグラスが置かれていた。

 あれ、ここはあの奇妙な動物のモチーフはないのか。

 窓は右手の奥に一つあるのだが、どうやら羽目殺しの窓である。陸は荷物を無造作に置くと、目を輝かせて部屋の左側にある扉を開けた。するとそこはバス、トイレで、陸の安アパートよりも十分広いスペースであった。

「おお〜」と思わず声を洩らした。


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