雪に埋もれた境界線
「ニュースなんてつまんな〜い。陸もニュースなんて見ないでしょ?」


 久代が陸に同意を求めたが、陸はニュースが嫌いではなかったので、どう答えようと考えあぐねていると、代わりに答えたのはすっかり寛いでいた高田だった。


「俺もニュースなんて嫌いだね。一体何が面白いんだか。お笑い番組の方がだんぜん面白いに決まってる」


 高田は、相馬と座間を一瞥し、見下すような口調で云った。

 すると相馬と座間は気分を害したようで、高田を睨みつけたのである。

 その時、突然木梨がテレビに視線を向けたまま、何やら驚いているような声をあげた。


「ちょっと、こ、この人」


 テレビに視線を向けると、ニュースキャスターの女性がよく通る声でハッキリと今日の事件を伝えているようだった。

 それは、同じ県内のアパートで男が殺されていたというニュースだったのだが、被害者の名前と顔写真を見て、木梨はそれに驚いていたのだった。他の者達も木梨のように驚愕したのは云うまでもない。

 被害者の名前は、今ここにいる高田順平と同姓同名で、五十二歳の男だったのである。しかし顔写真は、ここにいる高田とは全くの別人だったことで、更に驚いたのだ。

< 23 / 95 >

この作品をシェア

pagetop