雪に埋もれた境界線
 陸と久代は一緒に食堂へ向かった。その間、誰かにすれ違うということもなく、屋敷内はシーンと静まり返っており、薄暗さも手伝い不気味に思えた。

 食堂の扉を開けると、すでにテーブルには朝食の用意がされており、メイドの鶴岡と半田が入ってすぐの入り口に立っていた。


「おはようございます」


 無表情でメイドの鶴岡が白髪頭を下げた。そして隣りには小柄な半田が立っており、鶴岡に倣い、無表情でお辞儀をした。

 陸と久代は思わず緊張して顔を見合わせると、それからメイド達の方を向き、無言でお辞儀をした。

 食堂の時計は午前七時五十分を示し、陸と久代はおずおずと自分の名前が書かれているプレートの席に着いた。

 その時、食堂の扉が再び開くと、木梨と座間が入ってきたが、相馬の姿はなく、もちろん高田の姿もなかった。やはり高田は帰ったのだろう。相馬はまだ寝ているのだろうか。


「陸君と久代ちゃん、早いねぇ」


 木梨が微笑んだ。


「でしょ〜。そういえばさ、高田さんって、やっぱり帰ったのかな」


「食堂に来てないのか。あれ、相馬さんもまだ来てないようだね」


 久代と木梨は食堂を見渡し、高田と相馬の姿がないことに気付いたようだった。

 すると、再び食堂の扉が開き、陸は高田か相馬のどちらかが入ってくるのではと予想したが、どちらでもなく、執事の磯崎が入ってきたのである。

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