雪に埋もれた境界線
「起こさなくていいんじゃない、陸。さっき磯崎さんも、面接に来なければ失格って云ってたじゃん。寝てる方が悪いんだよ」


 久代が口を尖らせ、陸に抗議した。


「そうだね。云わば私達候補者はライバルでもあるわけだから」


 木梨も久代の意見に賛成なのだろう。ライバルという言葉を用いた。


「私もそう思うな。陸君、わざわざ起こしに行くことはないよ」


 座間も太い声で陸に抗議した。

 陸は溜息混じりに「はぁ」と答えると、グラスに入っているオレンジジュースを飲んだ。

 そして候補者四人は黙々と食事を済ませると、面接までサロンで寛ごうということになり、四人とも立ち上がった。

 メイドの鶴岡と半田は相変わらずの無表情で、黙ったまま食器を片付け始めた。

 候補者四人はぞろぞろと食堂を出ると、サロンに向かい、廊下を真っ直ぐ歩き出した。


「それにしても、この屋敷は薄暗いねぇ」


 木梨は歩きながら天井を見上げてそう云うので、陸と久代も木梨に倣って天井を見上げた。


「朝だというのに薄暗いですよね」


「屋敷の中、薄暗いから超不気味〜」

 
 ふと隣りを見ると、久代はそう云いながら眉をしかめている。

 サロンの扉の前に到着すると、座間がゆっくりと扉を開け電気を点けた。
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