雪に埋もれた境界線
「石川陸さん、あなたの将来の夢は何ですかな?」


「夢? ですか……。現在、夢を探している途中……では答えになりませんか?」


「ほほう。それも答えの一つになるでしょうな。では、あなたがもし私の屋敷を手にし、財産の半分を譲り受けたらどうしますか? 屋敷に住まい、財産を使い、今の生活を捨てますか?」


「私は今の生活を変える気はありません。欲がないと云ったら嘘になるかもしれませんが、もしかしたら屋敷は別荘として使わせて頂くかもしれませんし、財産は自分の夢を見つけた時、有効に使えたらとは思います」


「そうですか。では、他の候補者達を蹴落とし、自分が選ばれたいとは考えたことはありませんか?」


「それはないです。選ばれたとしても選ばれなかったとしても、それが自分の運命だと思いますし、誰かを蹴落としてまで、手に入れたいとは考えられません」


「ほほう。あなたは真っ直ぐな人ですね。では最後の質問です。人間の欲について、どう思いますか?」


「人間の欲、ですか……。もちろん欲のない人間なんていないのかもしれません。けれども欲を持ちすぎると、越えてはいけない境界線を踏み越えてしまうのかもしれませんね。それが云わば、犯罪者となる場合だってあるでしょうし、一概には云えませんが……」


「あなたは頭の良い人のようですね。客観的に考えられる思考をお持ちだ。もしかして心理学でも学ばれたとか?」


「ええ。大学の時に」


「そうですか。では面接の結果は十二月九日の一週間後に、候補者全員の前で発表させて頂きます。それまでは屋敷でゆっくりとして下さい。これで面接は終了です」


「分かりました。では失礼します」

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