雪に埋もれた境界線
 陸は立ち上がると、ゆっくりと扉に向かった。

 結局、黒岩玄蔵なる人物の顔はよく見えなかったなぁ。

 でも、いくつかの質問だけで屋敷と財産の半分を譲る人を決めるなんて、彼は余程変わった人物だよな。それにしても、あれだけの質問なのに、携帯やノートパソコンを回収する必要があったのかは疑問だ。

 そんなことを考えながら、陸はあっという間にサロンの扉の前に来ていた。

 すると、陸が開けるより先に扉が開き、木梨が出てくるなり「うわっ」と驚いている。


「扉を開けたら目の前にいるからビックリしたよ。そうか、陸君が面接終わったからだね。今アナウンスで、次に私が呼ばれたところなんだよ」


「そうなんですか」


「それじゃ、行ってくるよ」


 木梨は張り切ってそう云うと、足早に廊下を歩いて行った。

 そして俺がサロンに入るなり、久代が駆け寄ってきた。
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