雪に埋もれた境界線
第七章 屋敷の孤立
 サロンではテレビが付けっぱなしになっていたのだが、その時、思いがけないテレビの言葉に、四人は一斉に画面に視線を向けた。

 どうやら殺人事件のニュースで、被害者は久代と同姓同名。この屋敷の近くに住んでいる辻本久代という三十五歳の女性が、公園で朝早く殺されていたのが発見されたらしいのだ。顔写真も出ていたが、ここにいる久代とは全くの別人である。

 偽者の高田の件があったので、三人の男達は一斉に久代を見た。


「私は本物だよぉ。だってこの被害者と歳だって全然違うし、私は招待状持ってきてるもん」


 久代は疑われたことに気分を害したふうではなく、案外落ち着いていた。


「そうだよね。高田さんが偽者に成りすますのは分かる気がするけどさ」


 座間は久代に微笑んだ。


「でも、久代ちゃんと同姓同名の人が殺されて、しかもこの屋敷の近くで事件が起こるなんて縁起悪いよね」


 陸は本当にそう思っていた。高田の場合は他人に成りすましていたけれども、久代が嘘を付いているとも思えないし、それにしても奇妙だな。


「本当縁起悪いよ。同姓同名の人がこの近くで殺されたなんて気分悪いし」


 久代は口を尖らせている。
 木梨は何も喋らず眉間に皺を寄せ、ニュースに視線を戻していたが、もしかしたら久代を疑っているのかもしれない。そんな様子だった。

 突然サロンの扉が開き、執事の磯崎が入ってきた。
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