雪に埋もれた境界線
 テレビでは夜のニュースが始まっており、またしても思いがけない名前が聞こえ、四人は一斉にテレビを見た。

 今度は木梨と同姓同名の、木梨勇作という二十五歳の男が、先程轢き逃げされたという速報だった。久代の時と同様、同じ県内で、この屋敷から近い道路での出来事らしい。顔写真が出ていたが、ここにいる木梨とは全くの別人である。


「一体どうなってるんだ。久代ちゃんと同姓同名の女性が殺されたと思ったら、今度は私と同姓同名の人物が殺されるなんて……」


 木梨は目を大きく見開き、心底驚愕しているようだった。


「ねぇ、何か変じゃない? 私だけならまだしも、木梨さんと同姓同名の人までが殺されるなんて」


「確かに変だね。こんな偶然あるのだろうか」


 陸と久代も思わず声をあげた。座間だけはぶるぶると震え出し、頭を抱えて「変だ、変だ」だの「私以外は、皆偽者だ」という言葉をぶつぶつ繰り返している。

 それからは再びサロンは嫌な空気が流れ、それぞれは会話もしなくなり、かといって誰も自室に戻ろうともせず、黙々とお酒を飲んでいた。

 とうとう候補者四人は一睡もせず朝を迎えてしまい、久代は完全に化粧が落ち、病人のような顔になっており、座間は青白い顔が更に青白く見え、木梨も目の下にくっきり隈が出来ていた。

 陸は三人の顔を見回すと、自分の顔も酷いんだろうなと思った。

 時刻は午前八時になろうとしていたので、候補者四人は疲れた顔で無言のまま立ち上がると、食堂に向かった。

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