雪に埋もれた境界線
 廊下に出ると相変わらず静まり返っており、足早に久代の扉の前に立つとノックした。
 なかなか扉を開けないので、「久代ちゃん、俺、陸だけど」と名乗ると、すぐに扉は開いた。久代の顔は化粧も落ち、目の下にはくっきりと隈が出来、お化けのようである。


「陸、どうしたの?」

 
 力の抜けたような声を出した久代は、視線が定まっていなかった。
 精神的にかなり参っているのかもしれない。


「もうすぐお昼だけど、少し話しを訊いてもいいかな?」


 すると久代は黙って陸を部屋に入るよう手で合図したので、陸は久代の部屋に入り扉を閉めた。


「久代ちゃん、少し質問するけれど、この屋敷に来た時の夜、サロンで相馬さんはどんな様子だったかな? どんな話しをしていたかな? 俺は最初に部屋に戻ってしまったから、些細なことでいいんだ。教えてくれないかな?」


 久代は小刻みに震えていたが、陸が安心するようにそっと久代の肩に手を添えると、少し落ち着いてきたのか、小さな声で「分かった」と答えた。    



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