雪に埋もれた境界線
 座間は自殺ではない。殺されたんだ。

 確か、パニックになって庭に飛び出した時、積もっていた雪で膝下を濡らしていた。俺もその後、庭に出て、同じように膝下を濡らしたんだ。だから部屋に戻ってすぐズボンと靴下を履き替えた。おそらく座間も部屋に戻って、すぐなのかは分からないが、ズボンと靴下を履き替えようとしたのだろう。首を吊っている座間のズボンも靴下も、履き替えた物だ。

 靴下などは新品を持参したのだろう。ゴミ箱には透明のフィルムに、バーコードと値段が書いてある紙が捨ててある。それは靴下を買った時に包んであるフィルムだ。

 座間が靴下を履き替えている最中に、何ものかが部屋に入ってきたか何かして、殺されたのだろう。

 犯人は誰かはまだ分からない……。
 まず木梨と久代の様子を窺ってみよう。

 陸は座間の部屋を静かに出ると、久代の部屋へ向かった。

 何度か声をかけると呆然としたままの久代が顔を見せた。


「気分転換になるか分からないけれど、一緒にサロンでも行かないかな?」


「うん。やっぱり独りより、その方がいい」


「そうだね。木梨さんも誘おうか」


 久代が素直に頷くと、二人で木梨の部屋に向かった。

 やはり木梨もどこか呆然としており、陸の提案に黙って頷くと、三人でサロンに向かい歩きだした。


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