雪に埋もれた境界線
 サロンに入ると、例のごとく久代がテレビのスイッチを入れ、それぞれがソファに腰掛けた。丁度三時のワイドショーが始まったところで、女性キャスターが始めにニュースを告げた。そしてそのニュースに、残った候補者三人は驚愕することになる。

 とうとう陸と同姓同名の、四十五歳の男性が死んだというニュースだった。またしてもこの屋敷からそう離れていない場所で轢き逃げにあったらしい。木梨と同姓同名の男を轢き逃げした車と同じではないかと云っている。

 轢き逃げの犯人は同一人物なのだろう。しかし故意的に轢き逃げをしたのだろうか。

 そんなことを考えていると、木梨と久代が陸に疑いの眼差しを向けた。


「陸、陸は本物なの? 屋敷の人達とは違って無表情ではないけれど、やけに冷静だし、今朝だって高田さんの死体を真っ先に見に行ってたし……。さっきだって座間さんが自殺した姿を見ても冷静だったよね?」


「久代ちゃんの云う通りだよ。陸君、君は何か知っているのではないかな? こうして候補者全員と同姓同名の人間が死んだことで何か知っているんじゃないか?」


「陸、本当は屋敷や財産の半分を誰よりも狙ってるんじゃないの? 私だってこんな状況だけど、お金を欲しい気持ちはあるよ。でも人を殺してまで欲しいとは思ってない」


 木梨と久代は交互にそんなことを云い、明らかに陸が全ての犯人ではないかと疑っている様子である。
 陸はそんな興奮状態の二人に狼狽したが、ハッキリと否定した。


「ちょっと待って下さい。木梨さんも久代ちゃんも。俺は何も知りませんし、誰も殺していません。そう云っても信じて貰えそうにありませんが」


「私は……もう陸も信用出来ないよ」


 久代はそう叫ぶと立ち上がり、続いて木梨も「私も同じだ」と立ち上がり、久代と木梨はサロンに陸だけを残し出て行ってしまった。

 陸は二人の後姿を見送ると天井を仰ぎ、深い溜息を吐いた。

 そして曇った窓を手で擦り、外を見ると雪がちらつき、幻想的な風景をぼんやり眺めた。

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