雪に埋もれた境界線
第十六章 図書室
 図書室にある本のジャンルは偏っていた。

 推理小説、ノンフィクション、心理学、それに黒魔術のジャンルまである。

 陸は、よく読む推理小説の本を手に取り、立ったまましばらく夢中で読んでしまっていた。それは有名な作家の初版本で、いつか読みたいと思っていた本だったからである。

 ふと図書室の掛け時計に視線を向けると、すでに午後十一時半を過ぎていた。
 本を読んでいると時間があっという間だな。

 一旦本を閉じると、次に陸は黒魔術の棚に移り、本を一つ手に取りパラパラと捲ってみた。すると、この図書室だけではなく、応接間やサロンはもちろん、屋敷の庭にもある動物らしき奇妙なオブジェと同じ写真が載っている。

 これは、一体どんな意味を持つんだ。黒魔術というくらいだから、奇妙なオブジェはあまり良い意味は持たないだろうが。

 ページを捲り読み進めると、やはり陸の想像通りだった。

 奇妙な動物らしきオブジェは、誰かを操る時に使う儀式のためのオブジェらしい。簡単に云うと、マインドコントロールのようなものである。操りたい人間を一度催眠状態にし、儀式を行う。そして催眠状態が解けると、すでにその人間を意のままに操ることが出来るらしい。そのまま維持させるためには室内を薄暗くし、奇妙な動物のようなオブジェを決まった場所に配置することが必要らしいのだ。

 黒岩玄蔵は何者なんだ。誰かを操るために、あちこちに奇妙なオブジェを飾っていたということか。その誰かとは、使用人達のことを示しているのかもしれない。それなら、無表情で感情がない態度にも頷ける。

 陸は、この屋敷の当主、黒岩玄蔵に対し嫌悪感を抱きながら、次に自分が大学で学んできたため興味のある心理学の棚に移ることにした。

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