雪に埋もれた境界線
「あれ? この題名見たことあるな。それにこの著者……」


 うわっーーー!

 図書室の扉の向こうから男性の叫び声が聞こえ、陸は慌てて向かおうとしたのだが、途中椅子に足が引っかかり派手に転んでしまった。

「痛っ!」と声を洩らすと立ち上がり、片足を引きずりながら扉に向かった。

 図書室の扉を開けると廊下はすでに静まり返っており、慎重に廊下に足を踏み出すと、誰かがこちらに向かって走ってくるような複数の足音がしたので思わず身構えた。


「石川さん? 今の叫び声は石川さんですか?」


 息を切らして現れたのは磯崎と鶴岡だった。


「いいえ、今叫び声がしたものですから」


 陸と磯崎と鶴岡は廊下を見渡すと、陸の部屋の扉が少しだけ開いていることに気付いた。


「あなたは図書室におられたのですか。はて? お部屋が開いているようですね」


 陸の部屋の扉に視線を向けながら、磯崎は少し開いている扉に近づいていった。

 確か、俺は部屋の鍵を閉めたはずなのに、どうして開いているんだろうか。疑問に思いながらも磯崎と鶴岡と共に自分の部屋に近づいていくと、木梨が頭を押さえながら廊下に出てきた。


「どうしたんですか? 何か叫び声が聞こえたような気がしたのですが」


 木梨は磯崎と鶴岡の次に陸と視線を合わせ、目を見開いて訊いた。


「今私達も誰かの叫び声で駆けつけたのですが、石川さんの部屋の扉が開いているようなので」


 磯崎はそう答えながら、陸の部屋の扉を開けた。

 すると、真っ暗な室内に人の影が浮かび上がっていたので、鶴岡が急いで部屋のスイッチを押した。

 室内がハッキリ見えるようになると、机の前で向こうに身体を屈める格好で人が倒れている。
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