雪に埋もれた境界線
陸は木梨を睨みつけながらそう云うと、鶴岡達使用人だけではなく磯崎までもが驚愕し、一斉に木梨を見た。
「陸君、私が一度君を疑うようなこと云ったから、根に持っているのではないかな? アリバイがないのは君も同じだろうし、私が犯人だという証拠はあるのかな?」
木梨は狼狽することもなく、落ち着いて陸に質問した。
「残念ながら、証拠はありません」
陸がそう答えると木梨は微笑みすら見せ、心底安堵しているようだったが陸は言葉を続けた。
「相馬さんと座間さんを殺した証拠はね」
意味深な陸の云い方に、木梨は表情を変え、眉間に深い皺を寄せた。
「それは、どういう意味なのですか?」
代わりに質問したのは磯崎だった。子供が大人に些細な疑問をぶつけるかのような、邪気のない表情をしていた。それが却って陸には不気味に思えて仕方ない。
「梅田さんの首を見て下さい。座間さんは違いますが、久代ちゃんの首の痣と同じなんです。すなわち同じ凶器だということですね。そして座間さん殺害ですが、彼が靴下を履き替えている最中に、木梨さんは彼を訪ねたのだと思います。靴下は片方しか履いていない状態でしたから。それと、おそらく座間さんや久代ちゃんは、身体も細く体重が軽いため、首吊り自殺に見せかけるには容易だったのでしょう。しかし相馬さんは体格もよく、呼び出したのが応接間だったこともあり、灰皿で撲殺したのだと思います。そして梅田さんも体格がよく、更に首吊り自殺に見せかけるには時間がなかったのでしょうね。目の前の図書室にいた私は慌てて出て行こうとし、派手に椅子を倒し転びましたから。その音が聞こえ、慌てて部屋から逃げたんだと思います。そして座間さんと久代ちゃんが殺された理由は、相馬さんと同じなのでしょう。しかし梅田さんだけは違います。彼は間違えて殺されたのです」
「間違えた、とはどういう意味でしょうか?」
鶴岡は梅田の遺体を一瞥すると、悲しそうな表情を見せた。
人間らしい表情を見たことで、陸はいくらか安心した。
「陸君、私が一度君を疑うようなこと云ったから、根に持っているのではないかな? アリバイがないのは君も同じだろうし、私が犯人だという証拠はあるのかな?」
木梨は狼狽することもなく、落ち着いて陸に質問した。
「残念ながら、証拠はありません」
陸がそう答えると木梨は微笑みすら見せ、心底安堵しているようだったが陸は言葉を続けた。
「相馬さんと座間さんを殺した証拠はね」
意味深な陸の云い方に、木梨は表情を変え、眉間に深い皺を寄せた。
「それは、どういう意味なのですか?」
代わりに質問したのは磯崎だった。子供が大人に些細な疑問をぶつけるかのような、邪気のない表情をしていた。それが却って陸には不気味に思えて仕方ない。
「梅田さんの首を見て下さい。座間さんは違いますが、久代ちゃんの首の痣と同じなんです。すなわち同じ凶器だということですね。そして座間さん殺害ですが、彼が靴下を履き替えている最中に、木梨さんは彼を訪ねたのだと思います。靴下は片方しか履いていない状態でしたから。それと、おそらく座間さんや久代ちゃんは、身体も細く体重が軽いため、首吊り自殺に見せかけるには容易だったのでしょう。しかし相馬さんは体格もよく、呼び出したのが応接間だったこともあり、灰皿で撲殺したのだと思います。そして梅田さんも体格がよく、更に首吊り自殺に見せかけるには時間がなかったのでしょうね。目の前の図書室にいた私は慌てて出て行こうとし、派手に椅子を倒し転びましたから。その音が聞こえ、慌てて部屋から逃げたんだと思います。そして座間さんと久代ちゃんが殺された理由は、相馬さんと同じなのでしょう。しかし梅田さんだけは違います。彼は間違えて殺されたのです」
「間違えた、とはどういう意味でしょうか?」
鶴岡は梅田の遺体を一瞥すると、悲しそうな表情を見せた。
人間らしい表情を見たことで、陸はいくらか安心した。