雪に埋もれた境界線
「素晴らしい。まさか見破られるとは思いませんでした。うかつでしたね、あなたは同じ心理学を学んだ方だ。候補者の過去も金銭だけではなく、詳しく調べるべきでしたよ」


「おい、待ってくれ。実験って何の実験なんだね?」


 木梨は腑に落ちない表情で陸に質問した。


「人間を使った心理学の実験というところだと思います。同姓同名の人間を二人づつ探しておき、私達六人に、この屋敷と財産の半分を譲るという餌をちらつかせ呼び出す。そして私達候補者のクローンのような存在として、屋敷の外では同姓同名の人間を次々に殺していき、この屋敷に集められた私達候補者がそれを知り、どんな反応を示すかの実験なのだと思います。殺し合いが始まることだって予測出来たはずです。六匹の空腹な動物の目の前で、一つだけ餌を見せたら、取り合いになるのと同じでしょう」


< 91 / 95 >

この作品をシェア

pagetop