雪に埋もれた境界線
「ふざけるな! 実験のせいで、たくさんの人を殺したというのか! 仲間であるはずの梅田さんが死んでも何とも思わないのか!」


 陸は憤りを露わにし、磯崎に怒声を浴びせた。


「実験のためなら、死もやむを得ないことでしょう。梅田も実験のせいで死んでしまったのは、本望に思っていることだと思います。鶴岡、半田、川西、お前達はどうだ?」


 川西は視線を梅田の遺体から磯崎に向け、それは憎しみの篭った目をしていた。


「磯崎さん、あんたはやっぱり間違ってる! 俺達はあんたにマインドコントロールされていたんだろう。梅田という仲間の死で、この実験がどれほど重罪か気付いたよ」


「ほほう。私の心理コントロールが解けるとは。鶴岡、半田、お前達もそうなのか?」


 鶴岡と半田は悲しそうな表情で深く頷いた。


「私の実験も、ここまでか……。」


 磯崎はそう云うと、ポケットから何やら取り出し、口に何かを入れ飲み込んだ。

 すると「うぅ」と呻き声を洩らし崩れ落ちた。どうやら毒を飲んだらしい。即効性の毒なのだろう。磯崎は皆が唖然としている間にすぐさま息絶えたのである……。

 それはあまりにも、あっけない幕切れだった。



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