春陽
「はぁ、はぁ、、はぁっ、、」
尋常じゃない息の切れ方。ひんやりとした空気のせいか少し胸が痛い…
気がつくと優里は家の前まで帰ってきていた。
「うぅ…うう~…」
この家にしか帰れない自分と、自ら命を絶とうとした事実、
また死にきれなかった事に心臓をも切られる思いがして…
優里は玄関の前にしゃがみ、誰にも見つからないように声を押し殺して泣いた。
自分を制止した男の事など考えては居られなかった。
ただ今ここに映るもの全てをとにかく否定したかったのだった。