春陽
その頃優里は食事を作っていた。
竜也は寝ているが、起きたらお腹を空かせるだろうと…簡単ではあるが支度していた。
すると車が家の駐車場に止まる音がした。駐車場で砂利道なのは近辺では優里の家だけ。
しかもエンジンの音から察するに、それは母の車だった。
今連絡も無しに帰って来るという事は…昨日は車で寝泊まりしていたという事なのだろう。
優里はそっと家を出て、母の車へ行く。
母は買い物袋を優里に渡すとこう言った。
「明日は洋平くんがね、竜也を誘ってどこかへ一緒に遊びに行きたいと声をかけてくれたの。後で竜也にも電話が来ると思うけど…良かったら優里もゆっくりしなさい。いつも…ごめんね」
優里は首を横に降ると笑顔を繕い言った。
「大丈夫だよ、お母さんもゆっくりしてね。また何かあれば言ってね」
そう言い終えると急いで家の中に入った。竜也が起きて母がいると気付けば、また喧騒は免れないと判断したからだった。