春陽


千理は家事を一通り済ませ、美容室に来ていた。
「向井様でございますね、すぐに担当の寺島をお呼び致します」

行きつけの美容室に、いつもの美容師。

と言っても、千理の昔馴染みだ。

同郷の友が、引っ越し先の割と近くに住んでいるという事は千理にとって嬉しい事の一つ。

都会に来たばかりの時はよく2人で飲んだものだった。

…と千理がふけっている所に寺島が背後から声をかけた。

「…よ。何を黄昏てんだよ(笑」

「別に?はは、久し振り(笑」


「は。おっと。…ご指名に預かりました寺島でございます。本日は貴女に魔法をかけ…」

「ぷっ、その謳い文句やめれ、俺は男だ(笑」

その苦笑いを見た寺島はクスクス笑いながら千理を席に案内した。

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