春陽
冷凍庫からパンをだし、チーズとハム、コーンを乗せてトースターに入れる。
その間にリンゴを剥き、皮は鍋に入れてお湯を沸かす。
そんな何気ない朝が、優里の心を弾ませる。
辺りにトーストとリンゴの良い香りが漂う。鍋の中が煮立ったようだった。
少なめの茶葉に少し冷ました鍋のお湯を注ぐと、アップルティ独特の爽やかな香りが優里を包む。
その爽やかさが、今の優里にはとても懐かしく感じた。
母と父が居ないけれど…きっと今だけかもしれない家での穏やかな時間。
洗面所から竜也が出るまでの少しの時間、優里は暫く、その幸せな気分を噛みしめていた。