春陽

2人は車に乗るとまた色々な話をした。

動物園で見た動物の話、他愛も無い話、よっぽど今日が楽しい日だったのか、来る時よりも弾んでいる。

だから朝待ち合わせをした最寄りの駅に着くまでの一時間半なんて、すぐに終わった。

「えっと、良かったら家まで送るから行き方教えて貰っていい?」

「あ…はい。そこの踏切を渡ってから…」

家に着くまでの間も道案内の為に途切れ途切れだが、それでも話は続いた。


「あ、そこです。そこのクリーム色の壁の家です」


「了解」

別れる時が名残惜しい。家が見つかると瞬時にそんな2人の間を雰囲気が漂った。

千理としては、恋人と別れるという感覚では無く…一人の可愛がりたい少女を辛い現実に引き戻したくないという感覚だった。
無意識下では違うのかもしれないが。


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