春陽

細かく家の事情は聞いていないものの、強いストレスを訴える体つきやケガ、そして何より本人の心情を聞いたからか…

今すぐにでも駆け付けて攫ってしまいたい程の感情に捕らわれた。


勿論千理本人は、人助けのつもりなのかもしれないが…


その心の底には別の感情も宿っていた事をまだまだ知る由も無かった。


金曜の夜、会議が終わると挨拶をしてから、時計も見ずに社内を出た。


足早に駅に着き、そこで初めて時計を目にした。


午後11時40分。


終電まであと2本。


急ぎたいもどかしさが千理を襲う。
別に助けてと要求された訳では無いが、何故か…胸がモヤモヤする。
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