春陽
千理が物音に振り返れば、テレビを見つめ青ざめた顔の優里。
ぼーっと…動かずに立ち尽くしていた。
千理は今のニュースを思い返し、テレビを消しながらまさか…と思う。
部屋のドアに立ち尽くす優里に出来るだけ優しく声をかけた。
「こっちおいで。髪、乾かすから…」
俯いたまま優里は答えた。
「…すみません…」
おずおずと歩き、千理の向かいに座った。
「先に…消毒するか。ほら、顔見せて」
と千理が言ったは良いが、なかなか優里は顔を上げない。
代わりに震える肩が、優里の心情を表していた。