春陽
暫くそうしていた。
涙が止まり、感情も収まり始める頃に、顔を上げ何気なく優里は聞いた。
「…何があったか…聞かないんですか?」
何気ない疑問。
千理は優里の少し赤くなった瞳に優しく微笑み、
「…聞いたら…優里ちゃんは楽になれるかな?」
…と言った。
優里は
「…分かりません。今は…話すのが辛いです…」
と、か細く答えた。
千理は優里の顔をまた両手で包み、柔らかく微笑むと
「…優里ちゃんが、聞いて欲しくなった時に聞くよ」
と答えた。
その暖かくも柔和な微笑みに、優里は見とれずにはいられなかった。