春陽

「坂木~、坂木~、お降りの際は…」

一時間半近くかけて、今朝優里を見送った場所の最寄り駅の坂木に着いた頃には辺りはすっかり暗くなっていた。

電車から降り、自転車置場まで歩く。


(星が少し見えるな…自転車で来たし、少し走って高台までいこ。)


坂木駅から見える高台は、千理の好きな場所の一つでもあった。

(よし、久しぶりに行くか)


千理は自転車に勢い良く乗り、線路と平行を走って北大路の踏切を過ぎると、そこから見える高台を目指して風を切っていった。

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