春陽

「そっか…いや、俺も時々行くようになったのはつい最近だよ。」

千理も優里も、一瞬高台へ行くようになった事を思い出した。

だが、口にはしなかった。お互いにそれが辛い記憶の扉を開けてしまいそうな鍵のように感じた。


「星が…綺麗に見えるんです。とっても…」

そっと優里が話す。

「あぁ、ここにしては見やすいね。誰も来ないし、町も一望出来て良い気分だ」

それに千理は冗談混じりのように話す。

今はこうしてあげるのが良いのだと、自分にも言い聞かせるように。

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