春陽

「お母さん!?」

一番に飛び込んだのは、階段の踊場で倒れ込む母だった。

母の元へと寄ろうとした途端、とても強い衝撃が優里を襲った。


急に視界が変わり、殴られたと自覚するまでに多少の時間を要した。


「何でそっちを心配するんだ!」


もうぐちゃぐちゃな心を必死で繕い、それでも兄を気遣いながら優里は言った。


「お母さん倒れてたから…お兄ちゃんも辛いんだよね…?

ごめんね、気が回らなくて」

兄はもう一度優里を殴りつけると…部屋へと戻って行った。

< 62 / 181 >

この作品をシェア

pagetop