春陽
「お母さん!?」
一番に飛び込んだのは、階段の踊場で倒れ込む母だった。
母の元へと寄ろうとした途端、とても強い衝撃が優里を襲った。
急に視界が変わり、殴られたと自覚するまでに多少の時間を要した。
「何でそっちを心配するんだ!」
もうぐちゃぐちゃな心を必死で繕い、それでも兄を気遣いながら優里は言った。
「お母さん倒れてたから…お兄ちゃんも辛いんだよね…?
ごめんね、気が回らなくて」
兄はもう一度優里を殴りつけると…部屋へと戻って行った。