春陽
優秀は蕎麦をかっこみ、辺りの食物をむしゃむしゃと食べる。
「んな焦らなくたってエビフライは逃げないぞ。よく噛め」
小言を言われ優秀は笑った。
「お前、良いトーチャンになるよ」
予想外の返しに千理も笑う。
「何だそりゃ。まだ早過ぎるな。そいやお前、彼女とか居ないのか?」
一瞬、優秀の動きが止まった。が、すぐに箸を置いて水を飲み干して言った。
「…居ないよ。俺は妹の世話をしなきゃならないから…」
まだ千理は深い意味は分からなかったが、何か理由があって生活を変えなければならない優秀に同情した。
「何かあったら言えよ。同僚だしな」
その一言に優秀は穏やかに答えた。
「ありがとな」