春陽
「え…えへへ」
嬉しくてにやける優里を見て、小夜は少し安心した。
(やっぱり子供は笑顔が一番ね)
「先生、ありがとうございました」
優里がお礼を言い鞄を手にした時、保健室のドアが空いた。
「あら倉科さん、気分は大丈夫なの?」
担任の館山霧子が入ってきた。穏やかな雰囲気のお母さんのような先生。
「あ、先生…」
優里は課題をやっていない事に今更に気付き、後ろめたさを感じた。
「お大事にね、お家はゆっくり休めないかもしれないけど…」
霧子は特に課題には触れず、そう言った。
優里はその言葉に困ったように笑うと、霧子と小夜にお礼を言い、保健室を後にした。