この腕の中で君を想う


止まるときの反動で少し体がよろめく


咄嗟に両手で手すりを掴みなんとか体勢を立て直す



さっき大声を出してしまったこともあってか、さり気なく見られてないかキョロキョロと辺りを見渡す

幸いにもみんな何食わぬ顔で新聞を見たり、携帯をいじっていたり自分の好きなようにしている


「良かった…」


ホッと胸をなでおろすと、再び前へ向き直る





「……?」


何となく誰かからの強い視線を感じたような気がして、思わず後ろを振り返るが


それらしき人は見当たらなかった



…気のせいか



きっと疲れているんだと自分に言い聞かせ、ドアがゆっくりと開くのと同時に

人の流れに身を任せるようにして電車の外へ足を運んだ









「…無理だったか」


フゥ…とどこか残念そうに溜め息をついて、電車を降りる悪魔の影があったとも知らずに


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