この腕の中で君を想う


「…もしもし?」


『あーカナちゃん?俺でーす♪増田だよん☆』


「カナちゃん呼ぶな…何の用だ」


無駄にテンションが高いことから、かなり酒が入っていることは容易に想像できた

大嫌いな呼び方で呼ばれ少しイラッとしたが

コイツは酔っぱらいなんだ。相手にしてはいけないんだと思い

淡々とした口調で用件を聞く


『カナちゃ~ん今からりゅーやんち来ない?』


「隆也さんの家?なんでまたそんな所に…」


隆也さんは俺の上司…つまりに部長にあたる存在だ

年も隆也さんの方が三つ上だが

堅苦しい言葉を嫌う隆也さんは仕事以外では敬語を使うなと命令し、仕事が早く終われば増田とセットで飲みに誘ってくる

そのお陰なのか…今では上司というより親しい友人のようであり、楽しい飲み仲間にまでになった

勿論仕事の早さは俺達より格段に上で、完璧にこなす

頼れる人であり尊敬できる上司だ



『とりあえずりゅうやに代わるねぇ♪』

そう言うと電話ごしにゴソゴソと音がして


数秒後"もしもし?"と隆也さんの低いバリトンが聞こえてきた



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