この腕の中で君を想う
「あの、こちらは高橋隆也さんのお宅でよろしいですか?」
「…ええ。どちら様でしょうか?」
「高橋部長の下で働いている白山です」
「あ!!白山さんね。ちょっと待って下さい」
途端に声色が明るいものになり、少し間があいてエプロン姿の女の人が家から出てきた
「どうぞ」
柔らかい笑みを浮かべると俺を中へ入るよう促す
「あ、はい」
俺は軽く会釈をすると、門の扉を開き、玄関の中へと足を踏み入れた
「お邪魔します」
靴を綺麗に整えて、家の中へ入る
「スーツ掛けときますよ」
「ありがとうございます」
お言葉に甘えて、俺はスーツを脱いだ
隆也さんの奥さんであろうその女性は自然に俺のスーツを手にとると
玄関の壁に備え付けられてあったハンガーに掛けた
気が利く奥さんだな…
俺は感心しながら遠慮がちに奥さんに問い掛けた
「本当にこんな時間にお邪魔してもよろしいんですか?」
「今日は増田さんの他に私の友達の娘さんが泊まりに来てるんで今更何人増えたって変わりませんよ」
嫌な顔ひとつせずにさっきと変わらない笑みを浮かべてくれた