この腕の中で君を想う



フルネームで覚えている自分に腹が立つ

忌々しいあの情景が走馬灯のように駆け巡り、みるみるうちに顔が険しくなる


「なんでって…俺が聞きたいんだが」

信じられないというような表情でしきりに目を泳がせる


かなり動揺しているのか、食べようとしていた豆がコロコロッと床へ転がった


「あれぇ~二人とも知り合いだったの?」

増田さんは私と白山奏斗を交互に見ながらニヤニヤと意味深な笑みを浮かべる


「別に…知り合いなんかじゃないですよ」


"無様だな"


あの屈辱的な言葉が脳裏をよぎる

コイツが私に何したと思ってるのよ

無理やりキ…キスされたのよ!?


なんて、言えるはずもなく


代わりに恨みをこめて白山奏斗をキッと睨んだ


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