この腕の中で君を想う

「やばっ…」

運が悪いというかベタな展開というか…


キッチンの明かりだけではリビング全体を照らせる筈もなく

案の定、近くにあったごみ箱を蹴飛ばしてしまった



「…誰だ」


物音に気付いた男は振り返るとリビングのドアへ目を向ける


「あ…ゴメンなさい…って…」

慌てて頭を下げて、徐に顔を上げた時


「白山奏斗…?」

クエスチョンマークが付くのは

オールバックじゃなくて髪を下ろしていたから一瞬誰だか分からなかったからで


「…フルネームで覚えてくれてどーも」


白山奏斗は私を見て呆れたように、だけど可笑しそうに笑った


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